クロムメッキ(Chromium plating)とは、金属クロムを電気めっきによって素材表面に薄い膜として析出させる表面処理技術です。
クロムは金属の中でも特に以下の特性を備えています。
- 高い耐食性
- 優れた硬度(900〜1100 HV)
- 美しい青白い光沢
- 耐熱性・耐摩耗性
これらの特性を部品表面に与えるために、さまざまな産業で利用されています。
クロムメッキの膜は非常に薄く、装飾目的であれば0.1〜0.5 µm程度、硬質クロムでは数〜数百µmまで厚く形成します。膜が薄くても性能が高く、広い産業で利用されている代表的なめっき技術です。
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クロムメッキの分類(装飾クロムと硬質クロム)
クロムメッキは大きく分けて「装飾クロムめっき」と「硬質クロムめっき」の2種類があります。
目的、膜厚、性能が大きく異なるため、用途に応じた使い分けが必要です。
1. 装飾クロムめっき(Decorative Chrome Plating)
目的:外観の美しさ+耐食性付与
装飾クロムは、ニッケルめっき層の上に非常に薄いクロム膜(0.1〜0.5 µm)を重ねることで、美しく耐食性の高い表面をつくる技術です。
特徴
- 明るく青白い鏡面光沢
- 高い耐食性(ニッケル層が主役、クロムが強化)
- 汚れ・キズが付きにくい
- めっき膜が非常に薄い
主な用途
- 自動車部品(メッキグリル、モール)
- 家電・水栓金具
- 装飾金具、建築金物
- 二輪部品、楽器部品
2. 硬質クロムめっき(Hard Chrome Plating)
目的:高硬度・耐摩耗性・寸法再生
硬質クロムめっきは、厚いクロム膜(数〜数百µm)を形成し、金属を強靭な表面に改質する技術です。
特徴
- 非常に高い硬度(750〜1100 HV)
- 優れた耐摩耗性
- 高温環境に耐える
- 摩擦係数が低い
- 膜が厚いため寸法補修・再生にも使える
- ピンホールが発生しやすいので工程管理が重要
主な用途
- 油圧シリンダー、ロール、シャフト
- 金型・治工具
- 自動車/産業機械用摺動部品
- 高荷重・高摩耗環境部品
装飾クロムと硬質クロムの違い(比較表)
| 項目 | 装飾クロム | 硬質クロム |
|---|---|---|
| 主目的 | 美観+耐食性 | 耐摩耗性+硬度+寸法再生 |
| 膜厚 | 0.1〜0.5 µm | 数〜数百 µm |
| 下地 | ニッケルが必須 | 不要(直接めっき可能) |
| 光沢 | 非常に高い(青白い光沢) | 半光沢〜光沢 |
| 主な特性 | 美観、耐食性 | 高硬度、耐摩耗性、低摩擦 |
| 主な用途 | 装飾品、外観部品 | 工業部品、摺動部品、金型 |
なぜクロムなのか(クロムの科学的特性)
クロムがめっき材料として優れている理由は、その金属特性にあります。
1. 硬度の高さ
クロムは金属の中でも非常に硬く、750~1100 HVの硬度を持ちます。
2. 不動態皮膜による耐食性
表面に極薄い酸化クロム皮膜(Cr₂O₃)を自然形成し、腐食環境から保護します。
3. 耐熱性
酸化皮膜が安定しており、高温下でも変質しにくい性質があります。
4. 摩擦係数が小さい
潤滑性が高く、摺動部品の摩耗を大きく低減します。
まとめ(定義・分類の要点)
- クロムメッキは金属クロムを電気的に析出させる表面処理技術
- 用途に応じて装飾クロム(美観・耐食性)と硬質クロム(硬度・耐摩耗性)に分類
- 装飾クロムは薄膜で光沢重視、硬質クロムは厚膜で工業性能重視
- クロムの特徴(硬度・耐食性・耐摩耗・耐熱)を活かし、幅広い産業で利用されています